ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは?原因や対策方法、してしまう人の特徴を解説
目次
「ロジカルハラスメント」というハラスメントを耳にした経験はありますか。
ロジカルハラスメントとは、正論を過剰につきつけて攻撃し、混乱させたり、自信を奪ったりする嫌がらせのことです。
ロジカルハラスメントは、知らず知らずのうちにおこなってしまう場合もあるハラスメントのため、とくに注意が必要です。
本記事では、ロジカルハラスメントの定義や悪影響、対策方法について解説します。
ロジカルハラスメントとは
ロジカルハラスメントとは、他人に正論を過剰につきつけて攻撃し、混乱させたり、自信を奪ったりする嫌がらせのことです。
省略して「ロジハラ」と呼ばれる場合もあります。
たとえば、「言っている内容が全く理解できない」や「君の考えは間違っている」というような言葉で人を攻撃する行為が、ロジハラに該当します。
職場にロジハラが発生すると、委縮して自分の意見を発言できなくなってしまう従業員が出てくるなどの悪影響が想定されます。
どのような言動がロジハラに該当するのか、正しい知識をつけて、適切に対処できるようになりましょう。
ロジハラが増えている背景
なぜロジハラが発生するようになったのでしょうか。
ロジハラの増加の背景には、多様性の影響と、働き方の多様化の影響があると考えられています。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
多様性の影響
現在社会では、年齢や性別、働き方、国籍、障がいの有無などを問わずに、さまざまな立場の人たちがともに働く場面が増えています。
日本では、昔から「場の雰囲気を読む」「皆まで言わない」といったいわゆる「察する」文化、より砕けた表現で言えば「空気を読む」という文化があります。
しかし、多様性が推進され、さまざまなバックグラウンドをもつ人間が集まる場所では、空気を読んで察する対応が難しい場面も少なくありません。
その結果、より多くの事柄を言葉で伝える必要があり、これが表現の選び方や相手の感じ方によっては、軋轢を生むケースがあります。
たとえば、「あなたは間違っていますよ」と伝えたいとき、以前まではそれとなく雰囲気で伝えることができたものの、多様性が進むにつれ、真正面から言葉で伝えなくては相手に伝わらないといった場面が増えてきました。
このように、さまざまなバックグラウンドをもつ人と一緒に働くようになった状況も、ロジハラが発生する要因のひとつになっていると考えられるでしょう。
働き方の変化の影響
近年、リモートワークやテレワークなど、新しい働き方を導入する企業も増えましたが、ディスプレイに映る相手のコミュニケーションは、実際に対面しておこなうコミュニケーションと比較して、身振りや表情などの情報量がどうしても不足してしまう傾向があります。
身振りや表情などのいわゆる「非言語コミュニケーション」を補うために、言葉を多用する必要性が増している状況下で、言い方の加減を誤り、ストレートな表現をしてしまうケースが増えています。
結果として、言っている内容自体は正論だけれども、相手を委縮させてしまうといった場面が見受けられるようになりました。
ロジハラが与える悪影響
職場における論理的な意見の交換は活発におこなうべきですが、一方的に正論を突きつけ、相手を追い詰めるような行為は、さまざまな悪影響を及ぼす危険性があります。
ロジハラが与える悪影響の一例として、下記の4つがあげられます。
- メンタル不調
- モチベーション低下
- 生産性低下
- チームワークの欠如
ロジハラが与える悪影響について、具体的に解説します。
メンタル不調
ロジハラをうけた被害者は、自尊心や自信を失い、論理的な攻撃に拍車がかかれば、自分の意見や価値観が否定され、自分自身を疑いはじめてしまう可能性があります。
こうしたストレスや不安が大きい状況が長く続いてしまうと、うつ病や不安障害といった心の健康問題を引き起こす危険性もあるでしょう。
>メンタルヘルスケアが職場に必要な理由と進め方に関する記事はこちら
モチベーション低下
ロジハラは、自分の意見や考えを否定する形でおこなわれるため、繰り返される状況が続くと、被害者は自分の能力や判断力に疑問を抱くようになってしまいます。
また、正論を突きつけられて、自分のアイデアや意見が否定される状況が続くと、次第に新たな意見を出したり新たな課題に取り組んだりする意欲を失ってしまう可能性もあるでしょう。
生産性低下
モチベーション低下やストレス負荷が高い状況が続くと、当然、被害者の仕事におけるパフォーマンスは低下してしまうでしょう。
結果として、作業の品質や効率にも影響が生じて、生産性が低下する恐れもあります。
チームワークの欠如
ロジハラに限らず、ハラスメントが存在する環境では、コミュニケーションや協力が妨げられ、チームの効率や生産性が損なわれる可能性が高まります。
さらに、ロジハラが継続されると、離職率が上昇し、人材の獲得や維持が難しくなる状況にも繋がりかねません。
職場のロジハラは、組織全体のパフォーマンスや生産性に大きな悪影響を及ぼす危険性もあります。
>仕事のチームワークが低いことの悪影響とは?に関する記事はこちら
ロジハラと正論の違いとは
職場における論理的な思考やコミュニケーションは重要ですが、健全におこなうためにも、ロジハラにあたる行為とあたらない行為の線引きについて、正しく認識しておく必要があります。
この線引きを考えるにあたって重要なポイントは、相手への伝え方です。
つまり、同じ正論でも、ロジハラになる場合とならない場合があるということです。
ロジハラになってしまいがちなケースとして、自分が正しいという気持ちや、相手をやり込めてやろうという気持ちで、相手の事情を考慮せずにミスを糾弾したり、反論する余地を与えないような言い方になってしまったりというものです。
決して「論理的であること」がロジハラの要件ではなく、論理的な考えを背景として、相手に不快感を与えるコミュニケーションがロジハラと認められるケースが多いのです。
そのため、職場で健全な意見交換をおこなうためには、自分の意見や考えを主張する行為だけを重視するのではなく、相手に配慮した伝え方やコミュニケーションを意識する必要があるのです。
ロジハラをしてしまう人の特徴
次にロジハラをしてしまいがちな人の代表的な特徴について確認していきましょう。
あくまでも、後述する内容の傾向が強いだけであって、一部当てはまっていない、あるいは別の特徴ももっている可能性も十分にあります。
- 自分が正しいと思っている
- 相手の気持ちを考えられない
- 優位に立ちたい気持ちが強い
- 相手を自分より下だと思っている
代表的な特徴である点を理解したうえで、確認していきましょう。
自分が正しいと思っている
自分に自信があり、自分の意見こそが正しいと信じている人の場合、相手の立場や事情を顧みずに、ひたすら正論を展開してしまうケースがあります。
この傾向をもつ人は、キャリアを積み重ねている場合も多く、能力や経験に基づいて判断・行動しているため、ロジハラをしてしまっているという自覚がない傾向にもあります。
相手の気持ちを考えられない
相手への共感が足りずに、必要以上にストレートな表現をしてしまったり、乱暴な言い回しをしてしまったりなど、無配慮な言動をしてしまうタイプも、ロジハラ加害者に多い特徴のひとつです。
自分の言動に対して相手がどのように感じているかなどに配慮があれば、一方的な議論になる場面は少ないですが、他人の視点や感情を尊重しなければ、相手の疲弊につながるでしょう。
優位に立ちたい気持ちが強い
相手を言い負かす、やり込める行為で、一時的な優越感を得たり、自尊心を満たそうとしたりする人も、ロジハラをしてしまう人にありがちな特徴のひとつです。
このような特徴をもつ人は、「正しいのであれば相手のことはお構いなし」と言わんばかりに、相手に正論を突きつけてしまう場合があるでしょう。
相手を自分より下だと思っている
自分が人よりも上位に立つ状況を好む人は、ことあるごとに人を見下してコミュニケーションを取ろうとする傾向があります。
正論を背景に、相手をやり込めるような言動をとってしまう状況が多くあるでしょう。
ロジハラが発生しやすいシーン
職場におけるロジハラは、どのような場面で発生しやすいのでしょうか。
職場においてロジハラが発生しやすいシーンを3つ紹介します。
- ミスやトラブルが発生した場面
- ミーティングや会議などの場面
- 情報共有や報連相が必要な場面
3つのシーンをそれぞれ詳しくみていきましょう。
ミスやトラブルが発生した場面
ミスやトラブルが発生し、指導が必要になるシーンは、ロジハラが発生しやすい状況といえるでしょう。
ヒューマンエラーが原因で起こるミスやトラブルに対する指導は、正論である場合が多く、指導される側には反論の余地がないケースが多いです。
このような状況では、ミスをしてしまった社員に対するマイナス感情が先走ってしまい、ここぞとばかりに正論で、相手を追い詰めてしまいがちになるでしょう。
ミーティングや会議などの場面
ミーティングや会議では、本来建設的な意見交換がおこなわれるべきですが、意見の対立が生じやすい場面でもあります。
たとえば、一方が他方の意見を論理で圧倒し、意見を押し通そうとするといったシーンでは、主張の仕方を間違えてしまうと、ロジハラになる可能性が高いです。
情報共有や報連相が必要な場面
ロジハラ気質な上司や同僚の場合、情報共有のための報連相の場面においても、細かなところを指摘し、そこから正論で責め立ててしまうといった状況が起こりえます。
日常的なコミュニケーションにおいて、ロジハラが生じてしまうようになると、業務上重要な報連相も満足にできずに、業務の円滑な遂行が妨げられてしまいかねません。
ロジハラの対策方法
論理的な意見交換やコミュニケーションを目指すうちに、時として、強い口調や語気になってしまうケースもあるでしょう。
知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうロジハラの加害者にならないようにするためには、どのようなことに気をつければいいでしょうか。
自分がロジハラの加害者にならないためにできることを4つ紹介します。
- アサーティブコミュニケーションを鍛える
- 相手の話を受け止める
- 伝え方や言葉遣いに配慮する
- 正論だけが正義だと思わない
コミュニケーションをとる際は、ぜひ意識してみてください。
アサーティブコミュニケーションを鍛える
アサーティブコミュニケーションとは、自己の権利を主張すると同時に、他人の権利も尊重する、効果的でバランスのとれたコミュニケーションスタイルのことです。
重要なポイントは、非暴力かつ礼儀正しい表現や言葉の選択により、相手の意見も受け身でなく、より注意深く聞き取り、必要に応じて質問し相手の本意をくみ取るスキルも必要とされます。
自他をともに尊重するアサーティブコミュニケーションが身につけば、ロジハラの発生を防止できるでしょう。
相手の話を受け止める
コミュニケーションは双方向におこなうもののため、自分の意見ばかりを主張せず、相手の意見や思いを確認し、尊重する姿勢が重要です。
双方向のコミュニケーションを実現するためには、相手の意見や考えを尊重し、自分の意見が必ずしも正しいとは限らないという意識をもつ姿勢が大切です。
伝え方や言葉遣いを配慮する
自分の意見や気持ちを伝えようとするあまり、過度にストレートな表現や、粗野な言葉遣いをしてしまうと、それだけで委縮してしまう人もいます。
できるだけ強い言葉や言い回しは避けた言葉遣いも、ロジハラの予防には効果的です。
正論だけが正義だと思わない
論理的な思考や正論は重要ですが、正論だけが整理だと思い、相手に配慮できないと、建設的な議論はできないでしょう。
建設的な議論をおこなうためには、相手の立場や状況に応じた適切なコミュニケーションも重要なポイントです。
ロジハラをうけた際の対処方法
ロジハラに限らず、ハラスメントをうけた際に、対策や抵抗をおこなわないと、ハラスメントがエスカレートしてしまう危険性があります。
自分の心と身体を守るためにも、自分がロジハラの被害者となった際の適切な対処方法を知っておく心構えが大切です。
話を最後まで聞いてみる
ロジハラ加害者は、自分の意見や主張を相手に聞いてもらいたい傾向が強いため、不快だからと言って不必要に遮ってしまうと、かえって感情を逆撫でして、さらにハラスメントが悪化する可能性があります。
まずは、最後まで話を聞いてみると、加害者もそれだけで満足して、ハラスメントをおこなわなくなる場合もあるでしょう。
本人に伝える
ロジハラ加害者の意見に明らかな矛盾がある場合や、ロジハラがあまりにも目に余るようであれば、直接本人に伝えてみるのも効果的な手段のひとつとなります。
ただし、こちらも単純に正論を展開するだけでは、かえって相手の感情を逆撫でしてしまう状況につながりかねません。
相手が聞き入れやすい環境や、言葉遣いで話し合いを進める対応が重要です。
相手と距離をとる
直属の上司・部下といった職務上、近しい関係でなければ、できるだけ接触の機会を減らす対応も効果的です。
ただし、職場という環境上、完全に接触を断つ対応は難しい場合もあります。
自分だけで無理に対処しようとせず、適度に距離をとりつつ、適切な部署や担当者に相談する行動が大切です。
上司や人事に相談する
相手との距離をとる、直接伝えるという手段がとりにくい場合は、適切な部署や担当者に相談しましょう。
企業は、従業員が健康的に生き生きと働けるように、ハラスメントに対処する義務があります。
ロジハラによって、ストレスがかかり、メンタル不調をきたしそうな場合は、早期に上司や人事部に相談するようにしましょう。
>【社労士監修】ハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら
円滑なコミュニケーションに「Chatwork」
近年、様々なハラスメントが話題になっていますが、なかでもロジハラは、知らず知らずの内に、加害者になっていたという事例も多い厄介なハラスメントです。
ロジハラを防止、あるいは対処するには、相手の感情に寄り添った日頃の円滑なコミュニケーションがキーポイントとなります。
ロジハラを防止するためにも、社内コミュニケーションの方法を工夫し、心理的安全性の高いコミュニケーションを実現しましょう。
たとえば、近年増加しているリモートワークやテレワークでは、コミュニケーションが取りづらい状況がストレスとなり、円滑なやりとりが実現できないケースもあります。
離れた場所にいても、円滑で活発なコミュニケーションを実現する方法として、ビジネスチャット「Chatwork」の活用が効果的です。
「Chatwork」は、チャット形式でコミュニケーションがとれるビジネスツールで、1対1はもちろん、グループチャットを作成して、複数人でも簡単にやりとりができます。
また、「リアクション機能」を活用して、テキストでは伝わりにくい感情やニュアンスが伝わるため、心理的安全性の高いコミュニケーションを実現できるでしょう。
ぜひ、コミュニケーションの円滑化に「Chatwork」をご活用ください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
記事監修者:國領卓巳(こくりょうたくみ)
2009年京都産業大学法学部卒業、2010年に社会保険労務士の資格を取得。建設業界、製造業、社会保険労務士兼行政書士事務所での勤務を経て独立開業。行政書士資格も取得。中小企業の社長向けに「労務管理代行、アドバイザリー事業」「助成金申請代行事業」「各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)」を展開、企業経営のサポートをおこなう。