【社労士監修】ブラック企業とは?定義や特徴、見分け方を解説

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働き方改革
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【社労士監修】ブラック企業とは?定義や特徴、見分け方を解説

目次

ブラック企業とは、過酷な労働環境や不適切な人事管理などによって、従業員の健康や生活を脅かすような企業のことです。

ブラック企業に勤めてしまうと、プライベートや家族との時間が減少し、生活の質が低下するだけでなく、過労やストレスによって、心身の健康を損なうリスクも高まってしまうでしょう。

健康や生活を守るためにも、ブラック企業の特徴や見分け方を知っておきましょう。

ブラック企業の定義とは

ブラック企業の定義は公にされていませんが、一般的には以下の特徴を持つ企業がブラック企業とされています。

  • 長時間労働が常態化している
  • 達成不可能なノルマが課されている
  • 賃金不払やハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い

上記のように劣悪な環境で労働を強制する企業が、一般的に「ブラック企業」と呼ばれています。[注1]

ブラック企業の8つの特徴

ブラック企業は、主に以下の8つの特徴があるとされています。

  • 特徴(1):長時間労働の常態化
  • 特徴(2):休日や有給が取得できない
  • 特徴(3):残業代が支払われない
  • 特徴(4):給料が低い
  • 特徴(5):従業員の入れ替わりが激しい
  • 特徴(6):高すぎるノルマが課されている
  • 特徴(7):ハラスメントが横行している
  • 特徴(8):精神論で解決しようとする

自分の就業環境と照らし合わせてみてください。

特徴(1):長時間労働の常態化

長時間労働が常態化している企業は、ブラック企業にあたります。

労働基準法において、2か月から6か月で平均80時間を超える時間外・休日労働は、違法であるとされており、認められていません。

また、月80時間の時間外労働は過労死ラインとされており、労働者の命にも関わると危険視されています。

もし、長時間労働が常態化している企業に入社した場合は、仕事よりも命を優先し、早めに上司や人事に相談しましょう。[注2][注3]

>【社労士監修】過労死ラインとは?に関する記事はこちら

特徴(2):休日や有給が取得できない

労働基準法では、労働者は原則として毎週1日の休日を与えられ、有給休暇も労働者の権利として取得が認められています。

しかし、ブラック企業では休日を少なくしたり、有給休暇を取得させなかったりなど、労働者を休ませずに働かせる場合があります。

「繁忙期だから休みはない」「有給休暇を取得する社員は評価を下げる」といった理由で、企業側が休日や有給休暇の取得を拒否するのは、労働基準法の違反に当たります。

休日や有給休暇が取得できないと、労働者は十分な休息ができなくなり、心身に大きな負担がかかります。

特徴(3):残業代が支払われない

労働基準法では、労働者が所定労働時間を超えて労働した場合は、残業代を支払わなければならないとしています。

しかし、残業時間の申告を認めずにサービス残業をさせて働かせたり、固定残業制度を理由に固定残業代分のみしか支払わなかったりなど、違法となる手段で残業代を支払わない企業は、ブラック企業にあたります。

>【社労士監修】残業の定義とは?に関する記事はこちら

特徴(4):給料が低い

ブラック企業は、労働者をできるだけ安く働かせて利益を得ようとしています。

そのため、基本給が低く、役職が上がっても賃金がほとんど変わらないなど、従業員に対して売上を給与に還元せず、利益の追求だけを求める傾向があります。

また、基本給が低い企業では、時給ベースで最低賃金を下回っている可能性があります。

月給制で支給している従業員においても、時給ベースで最低賃金を下回るのは違法です。

基本給が低い場合は、最低賃金を下回っている可能性もあるため、注意しましょう。

特徴(5):従業員の入れ替わりが激しい

従業員の入れ替わりが激しい企業は、離職率が高い企業です。

離職率が高い原因は、社内環境が劣悪であることを意味しているため、ブラック企業の可能性が高いでしょう。

また、従業員の入れ替わりが激しい企業は、常に求人を出しているのも特徴のひとつです。

求人票を検索すると必ず出てくる企業には注意しましょう。

特徴(6):高すぎるノルマが課されている

営業職に対して、達成できないような高いノルマを課して売り上げを伸ばす企業もあります。

従業員はノルマ達成のために、身内や友人に声をかけて商品を売ったり、時には自分で商品を買ってノルマを達成しなければなりません。

高すぎるノルマは、従業員が身を削って働くことになり、確実に精神が追い込まれてしまうでしょう。

特徴(7):ハラスメントが横行している

セクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)などのハラスメントが横行している企業は、典型的なブラック企業といえるでしょう。

ブラック企業には、ハラスメントに対する防止策を講じる義務がありますが、それを怠りハラスメント行為を放置しています。

なお、ハラスメントが当たり前の文化になっており、ハラスメントしていることに気づいていない企業もあるので注意しましょう。

>【社労士監修】ハラスメントの定義とは?に関する記事はこちら

特徴(8):精神論で解決しようとする

「気合でなんとかしろ」「根性が足りない」など、精神論で解決しようとするのは、ブラック企業の特徴のひとつです。

部下の仕事ができない理由を気合や根性のせいにして、「指導している感」を出している経営者や管理職が多い企業は、精神論で解決する文化が根付いています。

「とにかく仕事しろ」というのは正論ですが、精神論だけでは若手の成長にはつながらないでしょう。

ブラック企業の見分け方とは

ブラック企業かどうかを見分けるためには、以下の特徴をおさえると良いでしょう。

  • 精神論が使われていないか
  • 上下関係が度を超えて厳しくないか
  • 給料や労働時間は適正か
  • 頻繁に求人募集を出していないか

ブラック企業に勤めてしまうと、心身の健康が失われてしまう可能性が非常に高いです。

健康的に働くためにも、ブラック企業の見分け方を覚えておきましょう。

精神論が使われていないか

「気合と根性で乗り切れ」「努力すれば何とかなる」など、このような言葉や言い回しが頻繁に使われる企業では、精神論だけで乗り越えようとする環境が当たり前になっている可能性があります。

精神論がまったく使われていない企業がホワイト企業であるとは限りませんが、精神論が過度に使われる場合は、ブラック企業に分類されるでしょう。

上下関係が度を超えて厳しくないか

上下関係が度を超えて厳しく、若手の主体性や意見を封じ込めようとするのは、ブラック企業の特徴です。

上司に意見を言うことができなかったり、上司の機嫌を損ねると怒鳴られたりするような点が見られる場合、上下関係が度を超えて厳しい可能性があります。

人権や尊厳が侵害されるような環境になっている場合は、ブラック企業といえるでしょう。

>風通しの良い職場とは?に関する記事はこちら

給料や労働時間は適正か

ブラック企業は、給料を低く抑え、労働時間を長く設定する傾向にあります。

給料が同業他社と比べて明らかに低かったり、長時間労働が常態化していたりする企業は、給料や労働時間が適正ではないと言えるでしょう。

給料が著しく低く、長時間労働の企業では、従業員の生活や健康を脅かすような環境になっている可能性があるため、注意が必要です。

頻繁に求人募集を出していないか

ブラック企業では、人材が定着せずに多くの離職者が出るため、頻繁に求人募集を出す傾向があります。

求人票の掲載期間が長かったり、同じ職種やポジションで繰り返し募集していたりする求人は、ブラック企業の可能性が高いといえるでしょう。

ただし、急成長している企業も求人募集を頻繁に出しているため、一概にすべてがブラック企業であるとはいえません。

しかし、頻繁に求人募集を出す企業は人材が定着していない可能性が高いため、そのほかの特徴が当てはまらないか確認し、注意するようにしましょう。

ホワイト企業の見分け方

ブラック企業の特徴とあわせて、ホワイト企業の特徴もみていきましょう。

  • 残業時間が少なく、定時で帰りやすい
  • 有給休暇が取りやすい
  • 休日数が十分にある
  • 福利厚生が充実している
  • 給与水準が高い
  • 各種手当が充実している
  • 社員の働きやすさを重視している
  • 社員の健康を大切にしている
  • 社員の意見や提案を尊重する
  • 社員の成長やキャリアアップを支援する

仕事の量や質が十分かどうかはもちろん、休みが取得しやすかったり、手当や福利厚生が充実していたりなど、従業員の働きやすさを重視している企業は、ホワイト企業と言えるでしょう。

また、プライベートと仕事の両立がしやすく、ワークライフバランスの実現がしやすい職場の場合、従業員のエンゲージメントも高まりやすく、生産性高く働くこともできるでしょう。

>ワークライフバランスに取り組むメリットに関する記事はこちら

ブラック企業にならないための取り組み

最後に、「ブラック企業」と呼ばれないように企業ができる取り組みを紹介します。

  • 労働時間を適切に管理する
  • コンプライアンスの意識を高める
  • 労働基準法を順守する
  • 従業員の声に耳を傾ける
  • 多様な働き方を検討する

一度ブラック企業と呼ばれてしまうと、従業員からの信頼を失ってしまったり、採用が難しくなったりなど、様々な悪影響が生じる可能性があります。

企業の持続的な成長を目指すうえでも、ブラック企業にならないための取り組みを進めましょう。

労働時間を適切に管理する

労働基準法では、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間と定められています。

また、残業時間は原則1か月45時間、年360時間までが限度です。

まずは、法律の上限を超える労働をさせないように、労働時間の管理を進めましょう。

管理職に勤怠管理の教育をしたり、勤怠システムを導入したりなど、勤怠管理を徹底することで、従業員の労働時間を正確に把握することができます。

勤怠管理を徹底することで、残業の理由や組織的な業務の負担が見え、労働時間の改善策を適切に講じることができるでしょう。[注2]

コンプライアンスの意識を高める

コンプライアンスとは、法令や社内規則を遵守することです。

コンプライアンスの意識を高めることで、以下のようなメリットを期待することができます。

  • 労働者の権利を守ることができる
  • 企業の社会的責任を果たすことができる
  • 企業の信用や信頼を高めることができる

具体的な施策としては、コンプライアンスの教育や研修をおこなったり、ガイドラインやマニュアルの作成・整備、相談窓口の設定したりなどが考えられます。

コンプライアンスの意識を高めることは、ブラック企業にならないための基本的な取り組みです。

企業は、従業員一人ひとりがコンプライアンスの重要性を理解し、実践できるように努める必要があります。

>【社労士監修】コンプライアンスとは?に関する記事はこちら

労働基準法を順守する

労働時間だけでなく、そのほかの労働条件についても、労働基準法などの法令を順守する必要があります。

主な労働条件は以下のとおりです。

  • 労働条件の明示
  • 有給休暇の年5日取得義務
  • 産前産後休業
  • 賃金支払い
  • 就業規則

そのほか、労働法に関する法律の遵守は徹底しなければなりません。

>【社労士監修】労働基準法とは?に関する記事はこちら

従業員の声に耳を傾ける

ブラック企業にならないための取り組みとして、従業員の声に耳を傾けることも、重要な取り組みのひとつです。

従業員の意見や提案を積極的に採用することで、労働環境の改善につながり、労働者のモチベーションを高めることができます。

ブラック企業にならないためには、従業員一人ひとりが意見や提案をしやすい環境を整えるとともに、従業員の意見や提案を積極的に採用することで、満足度が高まり、労働環境の改善をはかることができるでしょう。

多様な働き方を検討する

ワークライフバランスや働き方改革の推進などにより、多様な働き方ができる環境作りが求められています。

テレワークやフレックスタイム制の導入など、従業員の働き方の選択肢を広げれば、従業員のモチベーション向上がはかることができるでしょう。

従業員が求めている働き方を調査し、多様な働き方を選択できる環境を整えていきましょう。

>多様な働き方のメリットに関する記事はこちら

働きやすい会社づくりに「Chatwork」

「ブラック企業」は、過酷な労働環境や不適切な人事管理などによって、従業員の健康や生活を脅かすような企業です。

ブラック企業に勤めてしまうと、心身に不調をきたし、健康的に働けなくなる可能性があるため、就職・転職を検討する際は、ブラック企業の特徴を把握して、避けるようにしましょう。

また、企業側は、利益を追求するあまり、ブラック企業になっている可能性があります。

勤怠管理の徹底や従業員へのヒアリング、働き方改革などをおこない、働きやすい会社を目指していきましょう。

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[※1]出典:厚生労働省「ブラック企業ってどんな会社なの?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/zenpan/q4.html
[※2]出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
[※3]出典厚生労働省「過労死等防止対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053725.html

※本記事は、2023年12月時点の情報をもとに作成しています。


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Chatwork

Chatworkのお役立ちコラム編集部です。 ワークスタイルの変化にともなう、働き方の変化や組織のあり方をはじめ、ビジネスコミュニケーションの方法や業務効率化の手段について発信していきます。

記事監修者:北 光太郎

きた社労士事務所 代表。大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士として不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善など様々な取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、一般向けのブログメディアで労働法や社会保険の情報を提供している。

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