オリエンテーションとは?ビジネスでの意味や実施する目的・内容を解説
目次
オリエンテーションとは、新しい環境や状況に適応するための情報提供や指導をおこなうプロセスを指します。
たとえば、新入社員や中途社員に対し、会社の方針や業務内容、職場のルールや文化などを説明することもオリエンテーションの一種です。
正しくオリエンテーションをおこなうことで、新しい環境への不安を軽減し、参加者が自信を持ってスタートを切れるように後押しすることができます。
本記事では、新入社員や人事の方に向けて、ビジネスにおけるオリエンテーションの意味や実施する目的・内容について解説します。
オリエンテーションとは
オリエンテーションとは、新たな環境や組織に適応するためにおこなうプログラムを指します。
英語では「Orientation」と表記し、直訳すると「方向」「向き」という意味です。
オリエンテーションの実施の対象は、新入社員や中途採用者、新入生などが一般的です。
実施のタイミングは、新入社員や中途採用者は内定式後か入社式当日、新入生は入学式から授業開始日までの間におこないます。
ビジネスにおける意味
ビジネスにおけるオリエンテーションは、新入社員や中途採用者に向けた説明会や講習会を意味しますが、交流会や親睦会の意味で使われることもあります。
また、オリエンテーションと同じ内容を実施する場合でも、オリエンテーションという言葉を使わずに「説明会」「研修会」と呼ぶ企業もあります。
就職活動における意味
就職活動の段階では、以下のような意味合いで使われることがあります。
- 入社前説明会(同期や上司との顔合わせ、企業についての説明)
- インターンシップに参加するにあたっての説明会
- 面接の一種
ガイダンスとの違い
オリエンテーションとガイダンスの違いは、知識や理解度にあります。
オリエンテーションは、基本的な知識があることを前提としてより深い内容を説明しますが、ガイダンスは知識がない人や初心者に向けて一から説明します。
多くの場合に高校・大学でおこなわれるオリエンテーションは、ガイダンスの意味合いで使われることが多いです。
オリエンテーションの目的・意義
オリエンテーションは以下のような目的でおこなわれます。
- 学生と社会人との違いを認識してもらうため
- 自社への理解を深めるため
- 新入社員と企業の意識統一のため
- 従業員同士の人間関係を構築するため
- 従業員のエンゲージメントを高めるため
目的を知ることで、オリエンテーションを効果的に活用できるようになるため、実施する意義をおさえましょう。
学生と社会人との違いを認識してもらうため
新入社員は学生と社会人の違いがわからない人が多いため、社会に出て組織の一員として働くために、ビジネスマナーや自社で働く心構えなどを伝えます。
社会人の基礎力に通じる機会になるため、非常に大切です。
自社への理解を深めるため
オリエンテーションは自社への理解を深めてもらう機会でもあるため、会社の概要、ビジョンや方針、ルール、仕事の進め方なども説明します。
自社への理解は、自社に慣れてもらい、円滑に業務を進められるようにする目的でおこなわれるため、たいていは入社直後に実施され、入社式当日におこなう企業が多いでしょう。
新入社員と企業の意識統一のため
新入社員と企業の意識統一が目的の場合もあります。
企業の理念や方針を伝えてオリエンテーションで共有することで、自社の一員としての意識を持ってもらうことが目標です。
従業員同士の人間関係を構築するため
社内の人間関係の構築をスタートさせる目的でおこなうこともあります。
同じ職場で働く従業員と面識を持っておくと、研修や業務を円滑に進められるようになるため、オリエンテーションを活用して新入社員同士で親睦を深めたり、先輩従業員と顔合わせをしたりします。
従業員のエンゲージメントを高めるため
入社直後は企業について深く知らないため、愛社精神やエンゲージメントは低いでしょう。
そのため、オリエンテーションを機に自社についての理解を深めてもらい、愛社精神やエンゲージメントの向上につなげる目的もあります。
従業員のエンゲージメントが高まると、モチベーションの向上だけでなく、離職率の低下にもつながります。
オリエンテーションの内容
オリエンテーションでは具体的に何をするのでしょうか。
研修方法など伝え方は企業によって異なりますが、オリエンテーションの内容は主に以下の4つで共通しています。
- 社内の組織編成・制度・規則などの説明
- ビジネスマナーの研修
- コミュニケーションスキルの研修
- コンプライアンスの研修
それぞれの詳細を解説します。
社内の組織編成・制度・規則などの説明
前述のとおり、オリエンテーションには自社への理解を深めてもらう目的もあるため、自社の企業理念や事業内容のほか、組織編成、就業規則、行動規範を説明します。
共通認識を持てるようになると、自社の一員としての自覚や主体性を高められるでしょう。
ビジネスマナーの研修
ビジネスマナーは信頼関係の構築で必要になるなど、社会人には必要不可欠であるため、業務を開始する前のオリエンテーションで学びます。
たとえば、身だしなみ、挨拶、敬語、名刺交換、電話対応、来客対応、メール・文書の書き方などを練習します。
くわえてマナーの指導を通して、態度、報連相、時間の管理などの社会人として基本になるルールも身につけます。
コミュニケーションスキルの研修
学生と社会人では必要になるコミュニケーションスキルが異なるため、ビジネスにおけるコミュニケーションの重要性について理解する必要があります。
研修で学ぶ内容は、主に同僚や上司とのコミュニケーションの取り方、顧客や取引先などと良好な関係を築くための礼節やスキルなどです。
また「聞く」「聴く」「訊く」の違いや「言う」「伝える」の違いなどを理解して、対話力の向上も図ります。
コンプライアンスの研修
昨今では、従業員個人の言動が企業の信頼を著しく損なう恐れが高いため、企業の一員として遵守すべきコンプライアンスの周知も重要です。
社会人としての倫理観のほか、「ハラスメント」「情報セキュリティ」「著作権・特許権」などについても学びます。
オリエンテーションの形式・手法
オリエンテーションをおこなう目的は共通していても、適した形式や手法は企業の社風や従業員の特性、オリエンテーションの実施目的などによって異なります。
ここからはオリエンテーションの形式や手法について解説しますので、参考にしてみてください。
- 内定者懇談会
- グループワーク
- ロールプレイ
- ケーススタディ
- Off-JT(Off The Job Trainig)
- OJT(On The Trainig)
- ゲーム形式
それぞれの詳細を紹介します。
内定者懇親会
内定者懇親会は、内定者同士や従業員との親睦を深めるために開く、カジュアルな雰囲気の食事会や交流会です。
新入社員は社内の雰囲気を直接感じられる機会になり、入社前の不安軽減やモチベーションの向上が見込めるため、企業側は内定辞退の防止につなげられます。
一般的には、座談会、グループワーク、レクリエーション、オンラインでの顔合わせなどをおこないます。
グループワーク
グループワークは複数人でチームを組んで、テーマに沿って議論や意思決定などをおこなう研修方法です。
研修の種類は、自由な討論、課題の解決、ディベート対決、ゲームなどさまざまあります。
新入社員は、集団のなかでの立ち振る舞いを練習でき、企業側は新入社員のコミュニケーション能力や主体性などを把握できるメリットがある方法です。
ロールプレイ
ロールプレイは営業や接客など、実際に近い業務の疑似体験をする方法です。
参加者は割り当てられた役割を演じることで、さまざまな立場の人の考えを理解できるようになるほか、状況に応じた対応力などを身につけられます。
ケーススタディ
ケーススタディとは、具体的な事例をもちいて分析や研究をおこない、課題解決のスキルを養う手法です。
実際に起こった事例や起こりやすい事例を題材にすることで、問題解決に向けて思考する疑似体験ができ、実際に課題解決が必要な場面に直面したときに、迅速に対応できる力の習得が期待できます。
Off-JT(Off The Job Trainig)
Off-JTは、外部から招いた講師によって実施される研修です。
業務や業界に関して体系的に学ぶことができ、知識を短期間で集中して身につけられるほか、受講者に対して一斉に研修を実施するため、習得レベルを均一にできるメリットもあります。
>Off-JT(Off The Job Trainig)に関する記事はこちら
OJT(On The Trainig)
OJTは、新入社員に上司や先輩従業員が指導役となっておこなう研修です。
座学が中心のOff-JTに対して、OJTは実際の仕事を通じて、必要な知識やスキルを身につけられるように指導します。
実務を通して、より実践的なスキルの習得が見込める方法です。
>OJT(On The Trainig)に関する記事はこちら
ゲーム形式
ゲーム形式は、レクリエーションのようなゲームを取り入れた方法です。
新入社員の緊張を解きやすいため、主体的な参加が望めるほか、コミュニケーションの活性化も期待できます。
緊張をほぐす目的では「バースデーライン」や「共通点を探すゲーム」、従業員同士の関係の構築が目的の場合は「ペーパータワー」や「ドミノチャレンジ」、研修が目的の場合は「The 商社」や「マナーストーリー」といったように、目的に合わせてゲームを選ぶと効果的に活用できます。
オリエンテーションを進める手順やポイント
ここまで実施の目的や内容についてみてきました。
ここからは目的の設定から完了までをどのように進めるのか、手順と効果的におこなうポイントを合わせてみていきましょう。
- 手順(1):ゴールを設定する
- 手順(2):日程を決定する
- 手順(3):担当者を決定する
- 手順(4):プログラムを作成する
- 手順(5):目標とのギャップを把握する
手順(1):ゴールを設定する
オリエンテーションを効果的におこなうために、目標を設定しましょう。
「現場で必要なスキルは何か」「どのような人材に育てたいか」を見つめて、身につけさせたい知識やスキル、水準を決めます。
目標が定まると、おのずと必要な期間や講師などが明確になるでしょう。
手順(2):日程を決定する
オリエンテーションの時期は入社直後におこなうのが一般的ですが、実施する期間は数日から半年間ほどなど、状況によって異なります。
設定した目標や採用する手法に合わせて、必要な期間を把握して日程を決定しましょう。
手順(3):担当者を決定する
オリエンテーションには自社の従業員や外部の講師など、多くの人が関わるため、スケジュール調整が必要です。
日程が決まったら、すぐに担当者を選定して依頼しましょう。
選定の際は、新入社員の教育経験が豊富な従業員や、目標達成に必要なスキルを持つ講師を選ぶのがポイントです。
手順(4):プログラムを作成する
オリエンテーションで実施するプログラムは、目標や参加人数によって内容が異なるため、先述した手法を参考にして、自社に適したプログラムを作成しましょう。
座学など受け身の研修が続くと、集中力やモチベーションが低下しやすいため、主体的に参加できるゲームを組み合わせるなど、メリハリをつけるのがポイントです。
手順(5):目標とのギャップを把握する
オリエンテーションが終了したら、設定した目標を達成しているか確認しましょう。
重要なことは、目標の達成よりもその後のフォローや特性に合わせた部署の選定です。
目標とのギャップを把握することで、従業員に合わせたサポートができるほか、離職の防止につながります。
合わせて、フォローアップ面談の活用や普段のコミュニケーションを活性化するなど、困ったときに相談できる環境づくりも大切です。
中途採用におけるオリエンテーションのポイント
中途採用者の場合は、キャリアプランの悩みなど、新卒者とは異なる悩みを抱えることがあるため、オリエンテーション後に以下のフォローを検討しましょう。
- キャリアプランニングのサポート
- フォローアップ面談の実施
- コミュニケーションの充実
- 人間関係構築のサポート
中途採用のタイミングによっては、研修期間が短い場合に不安を感じたり、入社のタイミングや年齢などで人間関係の構築に悩みを抱えたりする人も少なくありません。
日ごろのコミュニケーションの充実や、フォローアップ面談やキャリアプランニングを実施するなどして、悩みや不安の解消を意識することで、離職の防止やスキルを活かした働き方の実現につなげられるでしょう。
オリエンテーションでの服装やマナー
オリエンテーションの服装は、会社から指定がある場合はその指示に従います。
- 男性の服装
- 女性の服装
- 服装自由の場合
指定がない場合でも、マナーに従った身だしなみが求められるため、注意点をおさえて適切な服装選びをしましょう。
男性の服装
男性はリクルートスーツを着用するのが基本です。
スーツは黒やネイビーなど落ち着いた色の無地、ワイシャツは白、ネクタイはシンプルな柄を着用して、プレーントゥの革靴を履きましょう。
カバンは配布された資料を入れられるように、A4サイズが収納できるサイズを選び、ヘアスタイルは黒髪の短髪が望ましいです。
オフィスカジュアルの指定がある場合でも、カジュアル過ぎる服装はマナー違反になるため、ジャケットと襟付きのシャツに、スラックスの組み合わせを着用しましょう。
女性の服装
女性もリクルートスーツの着用が基本です。
オフィスカジュアルを指定されたら、落ち着いた色のジャケット、白いブラウス、スラックスまたはひざ下丈のスカートを着用して、パンプスを履きましょう。
ヘアスタイルは、ひとつにまとめるかハーフアップにして、ヘアカラーはこげ茶か黒髪が基本です。
服装選びの際は原色や派手な色、肌の露出は避けて、アクセサリーやネイルは控えます。
アクセサリーを着用する場合は、デザインや色がシンプルなものを選び、ヒールの高さは指定がない限り、3cmから5cmのものを選びましょう。
服装自由の場合
「服装自由」といわれた場合は、スーツかオフィスカジュアルを選びましょう。
オフィスカジュアルの場合は、男女問わず黒・ネイビー・グレー・ベージュなどの落ち着いた色でまとめて、シンプルなデザインを選び、ブランド物は避けます。
迷ったときは、スーツを着用しておけば失礼がありません。
「服装自由」といわれた場合でも、デニムやレザー素材など、普段着の着用はマナー違反になるため避けましょう。
また、シミやシワがあると清潔感にかけるため、シミ抜きやアイロンがけは忘れずにおこないましょう。
オリエンテーションで入社後の業務を円滑に進めよう
ビジネスにおけるオリエンテーションは、新入社員が新たな環境に慣れられるようにするために実施しますが、実施の内容は自社の概要説明やビジネスマナーの習得など、企業によってさまざまです。
自社に適したオリエンテーションを実施することで、入社後の業務を円滑に進められるようになり、従業員のエンゲージメント向上や離職率の低下も見込めます。
目標に合わせて自社に適した手法を選ぶなど、手順やポイントをおさえて効果的にオリエンテーションを実施しましょう。
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新入社員が新たな環境に馴染んで仕事をするためには、オリエンテーションが重要ですが、良好な人間関係や相談しやすい環境など、安心して業務をおこなえる環境づくりも大切です。
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