「静かな退職」とは?増加の原因や対処方法、適切な向き合い方を解説
目次
「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、キャリアアップなどを目指さずに、必要最低限の仕事をこなす働き方のことです。
この働き方は、退職はせずに、契約範囲内の課された仕事をこなし、仕事に軸をおかないワークライフスタイルで、近年注目を集めています。
「静かな退職」が増えている原因や向き合い方を、わかりやすく解説します。
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「静かな退職」とは
「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、退職せずに必要最低限の仕事をこなす働き方のことです。
アメリカでは、仕事に力を入れて一生懸命働くことを「ハッスルカルチャー」と呼び、働き方の概念として浸透していました。
しかし、あるアメリカのキャリアコーチが、動画SNSのTikTokで「静かな退職」のフレーズを使った動画を発信したことがきっかけで、これまでのハッスルカルチャーに一石を投じる形となり、注目を集めました。
「静かな退職」は、仕事とプライベートのバランスを重視する傾向があるZ世代を中心に、共感を得ています。
「静かな退職」が増えている原因
アメリカを中心にひとつの働き方の概念として広がりつつある「静かな退職」ですが、なぜ共感性が高まっているのでしょうか。
「静かな退職」が増えている原因を詳しく解説します。
ワークライフバランスを重視する価値観
近年、仕事に打ち込むだけでなく、プライベートを充実させたり、結婚や育児、介護などのライフステージの変化を重視したりする価値観をもつ従業員が増えており、働き方や仕事に対する考え方が変化しています。
また、働き改革など、仕事とプライベートのバランスをとる姿勢が企業に求められていることもあり、仕事に主軸をおかない「静かな退職」に共感する人が増えていると考えられます。
>ワークライフバランスにとりくむメリットに関する記事はこちら
キャリアプランの描きづらさ
働き方の多様化によって、キャリアプランを描きにくいことも、「静かな退職」に共感する人が増えている要因としてあげられます。
たとえば、目標とするロールモデルが社内にいない場合は、働き方の指標がなく、目指すべき方向に迷いが生じる場面があるでしょう。
また、仕事に対するモチベーションを保てない場合も、キャリアアップを目標とせずに、日々自分の仕事をこなすことが目的となってしまいがちです。
「静かな退職」の現状
アメリカを中心に浸透がはじまっている「静かな退職」ですが、日本では耳にした経験がある方は多くないかもしれません。
しかし、ワークライフバランスを重視して、キャリアアップよりもプライベートを充実させる働き方を支持する価値観が、日本でも増えつつあります。
世論調査やマーケティングをおこなうアメリカのギャラップ社が、ビジネスパーソンを対象に実施した調査によると、「静かな退職」の働き方を選択する従業員が、ここ数年で増加傾向にあることがわかります。
「静かな退職」は、アメリカにおける労働力の、少なくとも 50%を占めており、おそらくそれ以上であろうとギャラップ社は述べています。
ギャラップ社が定義する「仕事に積極性を持たない、意欲がない(actively disengaged)」にあたる従業員の割合は、2020年には14%、2021年には16%、2022年には18%と上昇傾向にあり、アメリカの労働力において「静かな退職」の働き方が年々進んでいる実態がみてとれます。
これまでも、仕事に主軸をおかずに、最低限の仕事をこなして働く従業員は存在していたかもしれませんが、働き方改革の推進などが後押しし、「静かな退職」に共感を覚える人が、増えつつあると言えるでしょう。
日本においても、リモートワークやテレワークなどの新しい働き方や、正社員雇用にこだわらない柔軟な働き方の拡大など、働き方や仕事に対する価値観が変化しつつあり、「静かな退職」という働き方を選択する人も、今後増加していくことが想定されます。[※]
日本で「静かな退職」が発生する理由
日本で「静かな退職」が発生しやすい理由としては、以下の2つがあげられます。
- 業務範囲や責任が曖昧な現状
- 評価指標が曖昧な現状
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
業務範囲や責任が曖昧な現状
日本の企業は、業務範囲の線引きが曖昧なことが多い傾向があります。
業務範囲が明確になっていないと、責任の所在も不明確になってしまい、現場担当者や上長などにしわ寄せが来てしまうケースもあるでしょう。
このような、責任を押しつけられている状況を目の当たりにしていると、キャリアアップを望む従業員も少なくなってしまう可能性もあります。
また、業務範囲が曖昧な場合、自分の担当業務が終わっても、すぐに新たな仕事を頼まれかねません。
部署内で、必要最低限の仕事をこなす働き方を日常的に印象づけていれば、業務範囲が曖昧な仕事を依頼される機会も減らせるため、「静かな退職」の働き方が発生してしまうケースが想定されます。
評価指標が曖昧な現状
評価指標が曖昧な状況では、仕事に対するモチベーションを保つことが難しいです。
また、たとえ成果をあげたとしても、それに評価がともなわなければ、やる気も削がれてしまいます。
さらに日本では、いまだ年功序列での評価を採用している企業もあるため、勤務年数が少ない従業員は、仕事に意欲をもちにくくなってしまい、必要以上の仕事はしない働き方を選ぶようになるケースが懸念されるでしょう。
「静かな退職」に気がつく方法
企業内で「静かな退職」が増えてしまうと、労働生産性が低下しかねません。
「静かな退職」に気がつくためには、以下の兆候がみえていないかを注視する必要があります。
- 求められている以上の仕事はしない
- 企業への愛着や信頼をあらわすエンゲージメントが低下している
- 最低限の会話しかなく、業務意欲がない
- 会議でほとんど発言しない
- ほかの従業員の業務量が増えている
このような兆候がみえた場合、どのような原因で起こっているのかを確かめ、労働環境や評価制度などの改善を検討するようにしましょう。
「静かな退職」への適切な対処・向き合い方
「静かな退職」を意識した働き方をする従業員が増えてきた場合、企業はどのように向き合えばよいのでしょうか。
企業が「静かな退職」に適切に向き合う方法としては、以下の4つが考えられます。
- 職場環境の見直しをはかる
- 働きがいをもてる仕組みづくり
- 多様なキャリアパスを採用する
- 従業員の声に耳を傾ける
ひとつずつ解説していきましょう。
職場環境の見直しをはかる
従業員によっては、ワークライフバランスを調整せざるを得ず、「静かな退職」を選択している場合があります。
このような原因の場合は、職場環境の見直しによって、働き方を変えられる可能性があります。
たとえば、業務時間の短縮やリモートワークの推進、フレックス制度の導入などが、改善方法として考えられます。
従業員が、モチベーション高く、意欲的に働き続けるためにも、企業側は、従業員のライフステージが変わっても、働き続けられる環境を整えるようにしましょう。
働きがいをもてる仕組みづくり
従業員の働く意欲を高めるには、働きがいをもてる仕組みづくりが重要です。
年功序列での評価制度を見直し、仕事への貢献度や個人目標に対する達成度合いで評価するなど、公平で透明性がある評価制度を取り入れると、評価に対する納得度もあがります。
また、評価につながる指標が明確になれば、目標も立てやすく、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
多様なキャリアパスを採用する
従業員の働き方を狭めないように配慮することも、「静かな退職」を防ぐ方法のひとつです。
たとえば、ゼネラリスト・スペシャリストのどちらのキャリアも選べるようにするなど、従業員のキャリアデザインのサポートなども有効です。
また、従業員の働き方の指標として、目指すべきロールモデルを複数作っておくと、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
従業員の声に耳を傾ける
そもそも「静かな退職」を選んで働いている従業員は、仕事に対する情熱が、元からなかったのかを考えることも大切です。
もともとは働く意欲があったものの、労働環境や評価制度など、成果に見返りが感じられず、意欲を失ってしまった可能性もあります。
「静かな退職」の原因を見つけるためには、従業員の声に耳を傾けることも大切です。
社内コミュニケーション活性化には「Chatwork」
「静かな退職」とは、キャリアアップを目標とせずに、必要以上の仕事をしない働き方のことです。
この働き方は、働き方改革などにより、ワークライフバランスを重視した働き方が浸透してきたことで、耳にするようになりました。
「静かな退職」を実践する従業員が増えると、企業の労働生産性が落ちてしまう可能性があるため、企業としては防ぐべき事柄といえるでしょう。
一方で、「静かな退職」が増えた要因を発見し、労働環境や評価制度などを改善することで、従業員のエンゲージメントを高めるきっかけになります。
「静かな退職」の兆候を見逃さないように注視しておきましょう。
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[※]出典:Is Quiet Quitting Real? - Gallup
https://www.gallup.com/workplace/398306/quiet-quitting-real.aspx