ピグマリオン効果とは?マネジメントへの活用方法や定義、具体例を解説

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ピグマリオン効果とは?マネジメントへの活用方法や定義、具体例を解説

目次

期待されるとされたぶんだけ頑張ろうと思った経験はありませんか。

ピグマリオン効果とは、相手から期待されると、期待に応えようとして成果をあげる心理効果です。

教育現場で使われる機会が多い心理効果のひとつですが、上司と部下の間など、ビジネスシーンでも活用される場合もあります。

ピグマリオン効果の内容やメリット、マネジメントへの活用方法を解説します。

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、相手から期待されると、期待に応えようとして成果をあげたり成績が向上したりする心理効果です。

ピグマリオン効果は、アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタールが提唱した心理効果で、「ローゼンタール効果」や「教師期待効果」とも呼ばれています。

ピグマリオン効果の由来

ピグマリオン効果の「ピグマリオン」という言葉は、ギリシャ神話に登場する王の名前に由来しています。

ピグマリオンは彫刻家で、自分が彫り上げた女性の像に恋をし、像が人間になるように願ったところ、女神がピグマリオンの願いを聞き入れ、彫刻を人間にしました。

このピグマリオンの願いが叶ったギリシャ神話から、「相手への期待によって、期待された相手は思いに応えてくれる」という意味で、「ピグマリオン効果」という名前がつけられました。

ピグマリオン効果の心理学実験

ピグマリオン効果を確認するためにおこなわれた心理学実験について解説します。

ネズミを活用したピグマリオン効果の実験

ピグマリオン効果の提唱者であるロバート・ローゼンタールは、1963年にピグマリオン効果の最初の実験をおこないました。

実験内容は、ネズミを使った迷路実験で、被験者である大学生を2つのグループにわけ、それぞれのグループに、「訓練された賢いネズミ」「訓練されていないのろまなネズミ」と紹介しながら、実際には個体差のないネズミを渡しました。

実験結果は、「訓練された賢いネズミ」のほうがよい結果で、大学生のネズミに対する接し方も丁寧でした。

一方で、「訓練されていないのろまなネズミ」を渡されたグループは、ネズミを雑に扱うなどしていたため、結果も悪くなりました。

「訓練された賢いネズミ」を渡されたグループでは、教授の期待に応えたいという無意識な思考が、結果に影響したと考えられており、ピグマリオン効果が確認できたとされています。

知能テストを活用したピグマリオン効果の実験

ロバート・ローゼンタールは、1964年にサンフランシスコの小学校で、担任教師には実験の内容を伝えず、普通のテストを「今後成績が伸びる児童がわかるテスト」として実施させました。

テスト後、テストの結果を問わず、無作為に選んだ児童をAクラスとBクラスにわけ、Aクラスを「今後成績が伸びる児童」として児童の名前を担任教師に伝えると、担任教師は「成績が伸びる」という期待をAクラスの児童にかけるようになり、実際にAクラスの児童の成績が向上しました。

担任教師から期待されたAクラスの児童は、期待に応えようとして成績が向上したとされ、ピグマリオン効果が確認されました。

しかし、すべての実験で効果を確認できなかったため、実験の方法や結果に対しては、批判的な意見もあります。

ピグマリオン効果のメリット

ピグマリオン効果は、教育現場で用いられる機会が多い心理効果ですが、マネジメントや人材育成など、ビジネスシーンにおいても活用できます。

ピグマリオン効果を、マネジメントや人材育成に活用するメリットについて解説します。

職場の心理的安全性が高まる

職場では、チームメンバーや従業員同士間における相互の期待によって、職場の心理的安全性の向上が見込めます。

たとえば、上司が部下に対する期待を伝えると、部下の上司に対する信頼感が増し、相談しやすくなったり、率直な意見を出しやすくなったりして、心理的な負担軽減につながるでしょう。

また、心理的安全性の向上により、従業員同士が協力し合うようになるため、仕事もしやすくなると考えられます。

>心理的安全性とは?に関する記事はこちら

モチベーション向上が期待できる

部下や後輩社員が、上司や先輩社員から期待をかけられた場合、期待に応えようとして、モチベーションが向上する可能性があります。

モチベーションが向上すると、仕事への意欲が湧いたり、課題に前向きに取り組めたりするため、成果につながったり、自己成長できたりするでしょう。

従業員エンゲージメント向上が期待できる

企業から期待をかけられた従業員は、期待してくれている企業に対してピグマリオン効果を発揮し、業務に意欲的に取り組めるようになるでしょう。

意欲的な業務の遂行により、成果が出たり、自己成長できたりすると、従業員の企業に対するエンゲージメントが向上するため、離職率の低下や、企業へのさらなる貢献も期待できます。

>従業員エンゲージメントとは?に関する記事はこちら

ピグマリオン効果とそのほかの効果の違い

ピグマリオン効果には、似た心理効果や反対の効果をもたらす現象があるため、あわせて覚えておきましょう。

本記事では、以下の3つの心理効果を紹介します。

  • ゴーレム効果
  • ホーソン効果
  • ハロー効果

それぞれの心理効果の内容を確認していきましょう。

ゴーレム効果との違い

ゴーレム効果とは、相手から期待されていないと感じた場合、成果があがらなかったり、成績が低下したりする現象を指し、ピグマリオン効果と反対の影響をもたらす心理効果です。

ゴーレム効果は、ピグマリオン効果と同様、ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。

ゴーレム効果の「ゴーレム」とは、ユダヤの伝承に登場する泥人形です。

ゴーレムは、意思がなく、呪文を唱えると動き出しますが、ゴーレムの額の文字を一文字消すと泥に戻ってしまうという伝承から、ネガティブな影響によって、本来の能力を発揮できなくなる現象を「ゴーレム効果」と呼ぶようになりました。

ホーソン効果との違い

ホーソン効果とは、相手からの注目を浴びることで、期待に応えようと行動し、よい結果をうみだす心理効果です。

ホーソン効果と名付けられた理由は、ホーソン効果の実験が、アメリカにあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場でおこなわれたためです。

ピグマリオン効果とホーソン効果は、相手から「期待」されるか、「注目」されるかという違いがあります。

ハロー効果との違い

ハロー効果とは、相手の一部の特徴によって、全体的な認知を歪めてしまう心理効果です。

たとえば、面接に来た求職者の出身大学が著名だった場合に、「この大学を出ているから、仕事もできるだろう」「著名な大学を卒業しているから、家柄もいいのだろう」など、一部の情報から、関係のないほかの部分についても高く評価してしまい、正しい判断ができなくなってしまう現象が、ハロー効果です。

ハロー効果の「ハロー」は、「後光」を意味します。

ハロー効果は、相手の特徴によって自分の行動や認知が歪められるのに対し、ピグマリオン効果は、相手に向けた期待により相手の行動や意識に影響を与えるという点に違いがあります。

ハロー効果について、より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

>ハロー効果とは?に関する記事はこちら

ピグマリオン効果の具体例

前述したとおり、ピグマリオン効果は、ビジネスシーンのマネジメントにも活用できる心理効果です。

ピグマリオン効果をマネジメントに活かした場合の具体例を紹介します。

マネジメントにおけるピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、上司から部下、先輩社員から後輩社員へのマネジメントに活用できます。

たとえば、上司から部下へ期待をかけた場合、上司から期待をかけられた部下は、上司の期待に応えようと能動的な行動をとったり、報連相がまめになったりするでしょう。

また部下とのコミュニケーションが活発化すると、上司はさらによいアドバイスや励ましの言葉をかけられるようになり、信頼関係の構築やモチベーションアップなどの好循環を生みだします。

先輩社員から後輩社員へのピグマリオン効果では、期待に応えようとする後輩社員とのコミュニケーションの機会が多くなるため、先輩社員による育成精度の向上も期待できます。

>部下とのコミュニケーションの重要性とは?に関する記事はこちら

セルフマネジメントにピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、セルフマネジメントにも活用できます。

たとえば、自分自身に期待をかけることで、自分のモチベーションを高めたり、業務に積極的になれたりする効果が期待できます。

また、成し遂げたい業務や、達成が難しいと思っている目標がある場合に、「私ならできる」と自分に期待の言葉をかけたり、自分に期待するポジティブな言葉をメモして目に見えるところに貼っておいたりする取り組みで、気持ちが前向きになって、成功可能性をあげることができるでしょう。

>セルフマネジメントを強化する方法に関する記事はこちら

ピグマリオン効果をマネジメントで活用する方法

ピグマリオン効果を存分に発揮するためには、効果的な状況にしたり、心構えに気を付けたりすることが大切です。

本記事では、ピグマリオン効果をマネジメントで活用する7つの方法を紹介します。

方法(1):裁量を与える

期待をかける部下や後輩に裁量を与えることで、期待が相手に伝わり、ピグマリオン効果の発揮につながります。

相手に裁量を与えず、すべてに指示をだしたり、自分が遂行したりすると、相手は不満を感じ、「自分は期待されていない」とネガティブな感情を抱く恐れがあります。

裁量を与えることは、部下や後輩の育成にもつながります。

適切な裁量を与え、期待をかけている旨を伝えていきましょう。

方法(2):具体的に期待を伝える

ピグマリオン効果を発揮するためには、相手に対してはっきり「期待している」と伝える意思表示も大切です。

たとえば、相手が不安そうであれば、「あなたならできる」と声をかけたり、つまずいている場合はヒントを与えたりすると、期待している旨を伝えられるでしょう。

方法(3):達成可能な課題を与える

部下や後輩社員には、達成可能な課題を複数与えて、成功体験を積ませましょう。

小さなものだとしても、成功体験を積むと、自信をつけることができます。

部下や後輩社員に自信がついてきたタイミングで大きい課題を与えると、自信をもって課題に臨んでもらえたり、期待していることが伝わったりします。

方法(4):成果とプロセスの両方を評価する

ピグマリオン効果を発揮するためには、上司が部下に期待をかける必要がありますが、成果ばかりに着目してしまうと、期待がもてなくなる恐れがあります。

適切な期待をもつためにも、評価をする際に、成果だけでなくプロセスにも目を向け、頑張りを認めるようにしましょう。

成果とプロセスの両方を評価できれば、部下の頑張りや業務に対する姿勢にも目を向けられるため、頑張っている部下に対して今後も期待でき、適切な声かけもおこなえるようになります。

方法(5):悩みや課題に寄り添う

部下や後輩の悩みや課題に寄り添うことは、信頼関係の構築や心理的安全性の向上につながり、コミュニケーション活性化や業務に対するモチベーションアップを期待できます。

そのため、部下や後輩社員が悩みや課題を抱えている場合は、相談にのったりヒントを与えたりして、状況を打開できるように後押ししましょう。

>相談しにくい上司から脱却する方法に関する記事はこちら

方法(6):モチベーション管理に取り組む

部下や後輩社員のモチベーションを高く維持できるようなモチベーション管理は、ピグマリオン効果の発揮につながります。

たとえば、部下や後輩社員に対して、「頑張れ」という声かけで応援したくなる場面は多いと思いますが、この声かけを「君ならできる」や「期待している」という期待を込めた言葉に変えることで、すでに頑張っているのになお頑張らなければならないというマイナスな感情を抱かせません。

また、自分の実力を評価してくれていたり、期待をかけてくれていることを知れたりすると、期待に応えようと、さらに前向きな気持ちになる可能性があります。

>モチベーション管理のポイントに関する記事はこちら

方法(7):過剰な期待をかけない

ピグマリオン効果は、相手に期待することで成果につながる心理効果ですが、期待を過剰にかけすぎると、相手にとってプレッシャーとなり、本来の力を発揮できなくなる恐れがあります。

そのため、相手の性格や状況を把握したうえで、適度に期待をかけていく取り組みが重要です。

ピグマリオン効果の注意点

ピグマリオン効果は、適切に活用できないと、マイナスに働く恐れもあります。

たとえば、部下を過度に褒めすぎた場合、上司からの期待にもう十分応えられたと勘違いしてしまい、業務に対して真面目に取り組まなくなったり、向上心がなくなったりする恐れがあるでしょう。

ピグマリオン効果を高めるために、部下や後輩社員を褒める姿勢は大切ですが、相手の性格や仕事の状況を考慮して、褒めすぎないように気を付けたり、相手を成長させる新たな課題を与えたりする意識が重要です。

ピグマリオン効果を発揮するコミュニケーション方法

最後に、ピグマリオン効果をマネジメントにおいて発揮するための3つのコミュニケーション方法を紹介します。

  • 1on1ミーティング
  • OJT
  • メンター制度

ピグマリオン効果を期待して、褒めすぎたり期待をかけすぎたりしないように注意しながら、適切なコミュニケーションをとるようにしましょう。

1on1ミーティング

ピグマリオン効果を発揮させるには、相手の性格や仕事の状況を把握したうえでの、適切な期待が大切です。

そのため、定期的に部下と1on1ミーティングをおこない、部下の性格や業務の進捗を把握しましょう。

また、1on1ミーティングで部下に目標を与え、期待の言葉をかければ、モチベーションアップも期待できます。

>1on1ミーティングの進め方に関する記事はこちら

OJT

ピグマリオン効果は、OJTなどの新入社員研修にも活用できます。

新入社員は、職場の状況がよくわかっていなかったり、上司や先輩社員から寄せられる期待に自分が応えられているのかどうかの把握が難しかったりするため、OJTのなかで面談をおこない、上司や先輩社員の期待値と、新入社員の業務に対する満足度を擦り合わせましょう。

導く立場である上司や先輩社員と、期待を寄せられる立場である新入社員の間における相互理解の深まりにより、新入社員が過度にプレッシャーを感じずに済み、寄せられる期待に答えやすくなるなど、効果的なOJTを実践できるでしょう。

>OJTを効果的におこなう方法に関する記事はこちら

メンター制度

先輩社員が後輩社員の疑問に答えたり、補助したりするメンター制度でも、ピグマリオン効果の発揮が期待できます。

先輩社員が後輩社員の相談にのったり、業務に対するフィードバックをしたりする取り組みで、後輩社員は先輩社員からの期待を感じられるでしょう。

また、密なコミュニケーションにより、信頼関係が深まり、後輩社員の心理的安全性の向上もはかれます。

>メンター制度のメリットに関する記事はこちら

コミュニケーション活性化に「Chatwork」を活用しましょう

ピグマリオン効果とは、相手から期待されると、相手の期待に応えようとして成果を出す心理効果を指し、マネジメントや人材育成など、ビジネスシーンでも活用できます。

ピグマリオン効果を発揮するには、適切に期待をかけるための密なコミュニケーションが大切です。

上司と部下、先輩社員と後輩社員など、ピグマリオン効果の発揮に必要なビジネスシーンのコミュニケーションの活性には、ビジネスチャット「Chatwork」の活用がおすすめです。

テレワークやリモートワークなど、離れた場所で働いていると、隣の席の先輩に気軽に質問をしたり、ちょっとした雑談をしたりする機会は減ってしまい、コミュニケーションにハードルを感じる人もいるでしょう。

「Chatwork」は、チャット形式で気軽にコミュニケーションをとれるツールのため、メールや電話など、従来のビジネスコミュニケーションの手段と比較して、密なコミュニケーションや信頼関係を構築するコミュニケーションの実現に効果的です。

また、絵文字でリアクションを示せる機能も搭載されているため、感情を共有するコミュニケーションの実現もでき、心理的安全性の担保にもつながるでしょう。

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ピグマリオン効果に関するQ&A

「ピグマリオン効果」とは?

ピグマリオン効果とは、相手から期待されると、期待に応えようとして成果をあげたり成績が向上したりする現象です。

アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタールが提唱したことから、「ローゼンタール効果」や「教師期待効果」とも呼ばれています。

ピグマリオン効果とそのほかの効果の違いは?

ピグマリオン効果と、そのほかの主な心理効果との違いは次のとおりです。

・ゴーレム効果:相手から期待されていないと感じた場合に、成果があがらない現象で、ピグマリオン効果とは反対の影響をもたらします

・ホーソン効果:相手からの注目を浴びることで、期待に応えようとしよい結果をうみだす現象で、相手からうける「期待」か「注目」かで違いがあります。

・ハロー効果:相手の一部の特徴によって、全体的な認知を歪めてしまう現象で、相手に向けた期待により相手の行動や意識に影響を与えるピグマリオン効果とは異なります。

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