CoE(センターオブエクセレンス)とは?意味や役割を事例付きで解説

目次
CoEは、導入することによって事業の発展や業務効率化につながるとして、昨今のビジネスシーンで注目を集めています。
部署間や組織間の情報共有がうまくいっていない、組織が縦割りになってしまっているなどの課題を抱えている場合、CoEの導入で解消を目指せるかもしれません。
CoEの意味や導入のメリット・デメリット、成功事例などを解説します。
CoE(センター・オブ・エクセレンス)の意味
CoEとは、組織横断的な事業やプロジェクトに取り組む際、活用できるノウハウや優秀な人材をひとつの拠点に集約して組織化することを指す言葉です。
CoEは、「Center of Excellence」の頭文字をとった略語で、「センター・オブ・エクセレンス」もしくは「シーオーイー」と読みます。
CoEは、1940〜50年代のアメリカ・スタンフォード大学の取り組みをきっかけとして生まれました。
当時のスタンフォード大学は、卒業生が東海岸へ流出し、西海岸に優秀な人材が残らないことを課題視しており、状況を打開するためにアメリカのトップレベルの研究者を集め、最新の設備を導入した研究拠点を設置しました。
優れた研究拠点が設置されたことで、優秀な学生や知識・技術を求める企業が集まるエコシステムが生み出され、CoEは事業の発展や課題解決にも活かせる方法として企業へも普及していきました。
人事分野のCoE
人事領域におけるCoEは、戦略人事を実現するための3つの柱のひとつとされています。
人事領域には「3ピラーモデル」と呼ばれる戦略人事実現のための3つの柱があり、CoE、HRBP、HRSSで構成されています。
HRBPは、「Human Resource Business Partner」の略語で、人事施策の実行推進や、経営層への施策提案などをおこないます。
HRSSは、「Human Resource Shared Service」の略語で、給与計算や福利厚生業務などをおこないます。
CoEは、人材育成や情報の一元管理、HRBPのサポートなどをおこないます。
人事領域におけるCoEは、人事評価、採用、人材開発などのプロフェッショナル人材や、人事関連のノウハウをひとつの拠点に集約し、組織横断的な戦略実現を目指す役割を担っています。
そのほかの分野におけるCoEの例
医療分野におけるCoEは、がんセンターやリンパ浮腫センターなど、ある分野に特化した研究や診察・治療をおこなう施設を指します。
また、IT分野におけるCoEは、業務効率化につながるシステムの導入・運用などをおこなう組織を指し、プロジェクトに関わる部署間の連携サポート、効率的な進行管理、ノウハウの共有なども担っています。
CoEが重要視される理由
CoEが重要視される理由として、IT化やデジタル化、DX化にともない、組織横断的な戦略・施策・取り組みを実行する必要性が高まっていることがあげられます。
組織がIT化・DX化を推進するには、各部署で管理している情報を一元化し、スムーズに情報の共有や活用ができる仕組みの構築が必要です。
しかし、縦割り組織が多い日本企業においては横の連携が取りにくく、IT化がなかなか進まないという現状があります。
そこで、優秀な人材や情報、ノウハウを組織横断的にひとつの拠点へ集約できるCoEを導入すれば、部署の垣根を越えた連携が取りやすくなり、IT化やDX化の推進につながる可能性があるとして、CoEに注目が集まるようになりました。
CoEの役割
CoEの役割を7つ紹介します。
- 社内情報の収集・整理
- 経営戦略の企画立案
- 効果測定・フィードバック
- 業務プロセスの構築
- 社内イノベーションの促進
- 組織全体の業務改善
- ガバナンス・管理統制の向上
CoEがどのような役割を担うのか確認していきましょう。
社内情報の収集・整理
CoEは、社内に点在する情報を整理し、集約する役割を持っています。
企業では、一部の部署や特定の人物だけが情報やノウハウを独占し、属人化が進んでいるケースが少なくありません。
情報やノウハウが限られた人たちにしか共有されていない状態だと、組織全体の生産性向上が阻まれてしまったり、人材育成が滞ってしまったりするリスクがあります。
また、情報が点在していることによって、正しい全体像を把握しきれず、適切な経営戦略が立案できなくなるおそれもあります。
組織横断を可能にするCoEが導入されることで、社内の情報を集約しやすくなり、属人化や情報共有不足を改善することができるでしょう。
経営戦略の企画立案
CoEは、情報を集めるだけでなく、経営戦略の企画立案の役割も担います。
CoEが担う企画立案の例は以下のとおりです。
- 分社化や子会社化などの組織変革
- 新商品の開発
- 新設備や新システムの導入
- 販売網や営業力の強化
さまざまな企画立案をおこなうことで組織発展の後押しをするのが、CoEの役割のひとつです。
効果測定・フィードバック
CoEは、新設備を導入したり、新たな取り組みをおこなったりした部署の効果を測定し、他部署へフィードバックする役割も担います。
導入した設備や新たな施策がもたらした効果が全社的に共有されると、組織全体の業務効率化をはかりやすくなります。
また、施策の結果を受けて適切なフィードバックが実施されることで、施策立案者や共有を受けた従業員の内発的動機付けが起こり、業務へのモチベーションが向上する効果も見込めます。
業務プロセスの構築
組織横断の取り組みであるCoEは、各部署の業務プロセス構築の役割も担います。
事業の発展を目指し、各部署のマニュアル整備や業務の要否の見直し、業務の可視化による属人化解消などを通して、業務プロセスの構築や改善、再構築をおこないます。
組織全体の業務改善
業務プロセスの構築を通じて組織全体の業務改善をおこなうのも、CoEの役割です。
たとえば、システム化を推進したり、組織内の横の連携を強化したりして、組織全体の業務効率化や組織力の向上をはかります。
効率的な業務によって質の高い商品やサービスを提供できるようになれば、顧客満足度が高まり、企業の社会的信頼を上げることも可能です。
社内イノベーションの促進
CoEには、社内イノベーションを促進する役割もあります。
「イノベーション」は「革新」という意味の言葉で、ビジネスシーンにおいては、新しい技術や考え、アイデアによって社会に新たな価値を生み出す取り組みを指すことが一般的です。
社内でイノベーションを促進するためには、特定の分野や既存の考え、ルールに縛られずに、新しいアイデアを創出したり、柔軟に物事を考えたりする姿勢が必要です。
しかし、縦割り組織が一般的な日本企業では、専門的な知識が身につきやすい一方で、専門分野以外の知識やノウハウに触れる機会が限られる傾向があるため、社内イノベーションが促進されづらい環境といえます。
このような背景から、横断的な取り組みをおこなうCoEが社内イノベーション促進に有効であるとされています。
ガバナンス・管理統制の向上
CoEは、組織のガバナンス・管理統制の向上をはかる役割も担います。
安定した企業経営を実現するためには、以下のような観点で企業を監視することが重要です。
- 健全な経営がおこなわれているか
- ルールに基づいて運用されているか
- 組織戦略に基づいて運用されているか
- 不正がおこなわれていないか
CoEは、経営戦略や事業方針に則っているか、ルールが厳守されているかなどを確認し、必要に応じて是正します。
また、従業員のコンプライアンス意識を高めるなど、管理統制の向上をはかる役割も担っています。
>コーポレートガバナンス(企業統治)とは?に関する記事はこちら
CoEのメリット
CoEを社内に導入することで期待できるメリットを紹介します。
- 社内連携の強化につながる
- 情報共有の円滑化が期待できる
- 複雑な課題解決が実現できる
CoEの社内導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
社内連携の強化につながる
CoEを導入し、社内で縦と横の連携が強化されると、社内に点在している情報やノウハウを一元管理できるようになります。
情報が一元管理されるようになると、他部署の情報やノウハウも参照できるようになり、スムーズな業務遂行や、他部署のノウハウを活用した業務効率化などが期待できます。
また、社内コミュニケーションが活性化されると、認識相違によるミスやトラブルの発生も防止できるようになるでしょう。
情報共有の円滑化が期待できる
CoEの導入によって、全社的に情報が集約されるようになると、情報共有の円滑化が期待できます。
さまざまな部署からさまざまな方法で情報が共有されると、最新の情報がわからなくなったり、正しく伝達されなくなったりなどの弊害が起こりやすくなります。
CoEが全社の情報収集・整理をおこなえば、必要な情報を迅速に共有できるようになるため、共有漏れや情報錯綜のリスク回避につながります。
複雑な課題解決が実現できる
横断的な組織であるCoEが導入されれば、さまざまな分野の知識やノウハウを活用できるため、複雑な課題解決が実現できるようになります。
たとえば、特定の分野のみの知識では解決策が見出せなかったり、選択肢がひとつしかなかったりしたとしても、多角的な視点で見れば、よりよい解決策や複数の選択肢を見つけられる可能性があります。
また、さまざまな知見や考えを取り入れることで、課題解決のスピードも速まるため、ビジネスチャンス損失のリスク軽減なども期待できます。
CoEのデメリット
CoEを効果的に運用・活用するためには、導入によって想定されるデメリットも把握しておく必要があります。
- 特定の従業員に負担がかかる可能性がある
- 正常に機能しないケースがある
事前に把握しておくことで、デメリットの発生を防ぐこともできます。
デメリットの内容を詳しく確認していきましょう。
特定の従業員に負担がかかる可能性がある
CoEメンバーとなった従業員は、自分の業務とCoEの業務を兼務するようになるため、大きな負担がかかる可能性があります。
業務量や労働時間が増加すると、身体だけでなく精神にも負担がかかり、メンタルヘルスに悪影響が生じる恐れもあります。
また、CoEは全社的な改善や事業発展を目指す役割を担うため、責任の重さを感じて多大なストレスがかかるおそれもあります。
正常に機能しないケースがある
CoEの目的や役割が全社的に認識されない場合、正常に機能しないおそれがあります。
CoEの役割が正しく認識されていないと、システム導入の際にヘルプを頼める部署、業務改善の相談をできる部署などのように、特定の相談事をするだけの部署という扱いになり、CoEの役割も機能しなくなってしまいます。
全社的な業務改善や発展につなげられないばかりか、CoEの本来の役割を果たせないまま、CoEメンバーの負担ばかりが増える結果となってしまう可能性もあるでしょう。
CoE導入の成功事例
CoEの導入に成功した企業事例を3つ紹介します。
CoEの導入を検討している企業の方は、成功につなげるためにぜひ参考にしてください。
化粧品メーカーのCoE成功事例
ある化粧品メーカーは、「フレグランス」「スキンケア」「デジタル」「メーキャップ」の分野にCoEを導入し、全世界的なマーケティング展開に成功しました。
それぞれの分野においてグローバルな影響力を持つ最先端のエリアが情報収集や戦略立案、商品開発などをリードし、他のエリアに知見やノウハウを展開することで、世界に通用する強いブランド育成を目指しています。
さらにこのメーカーでは、各分野のCoE同士や、CoEと各研究開発拠点が連携する体制を整えることで、最新の技術や情報を収集・共有することにも成功しています。
[注1]自動車メーカーのCoE成功事例
ある自動車メーカーは、下記の課題を解消するためにCoEを導入しました。
- 自社の開発基盤では目指すDXに対応できない
- 老朽化したシステムを短期間で高品質に刷新する必要性がある
- システム化対応をやりきる人的リソースが確保できない
CoEを導入し、開発の標準ルールの整備や人材育成などをおこなったことで、従業員の誰もが運用・保守を担当できる環境の構築や、システム開発要員の確保に成功しました。
[注2]通信事業グループでの成功事例
ある通信事業グループは、AIやIoTなどのデジタル先進技術7分野においてCoEを導入し、グローバル受注や先進技術に精通した人材の増員、市場競争力の強化に成功しました。
また、世界各国にCoEを設置することで、高い受注実績のあるエリアの知識やノウハウを収集し、受注率の向上や自社のDX化推進にも成功しています。[注3]
CoEを導入する際のポイント
CoEの導入を成功させるためのポイントを4つ紹介します。
- 理想の人物像を明確に定義する
- キャリア・スキルマップを策定する
- 人材の育成・教育方針を策定する
- 社内全体での協力体制を構築する
CoEの導入が失敗に終わらないように、導入する際のポイントを確認していきましょう。
理想の人物像を明確に定義する
CoEの導入・運用を成功させるためには、メンバーとしたい理想の人物像を明確に定義することが重要です。
CoEを導入する各部署で理想の人物像をすり合わせ、CoEメンバーとして定義しましょう。
理想の人物像に該当する従業員がいない場合は、育成してスキルを補ったり、採用活動をおこなったりするようにしましょう。
理想の人物像にマッチしない人材をCoEメンバーとしてしまうと、思ったように機能せず、従業員に負担だけがかかってしまうおそれがあります。
CoEメンバーを選定する際は、スキルや役職、業種だけでなく、バックグラウンドや性別・年齢などが偏らないようにすると、多角的な視点でCoEが運営できるようになるでしょう。
キャリア・スキルマップを策定する
CoEメンバーを育成する際は、キャリア・スキルマップを策定しましょう。
CoEに必要なスキル、あると望ましいスキル、身につけて欲しいスキルなどを各部署ごとに設定し、従業員の現状スキルと照合することで、足りないスキルが可視化され、教育方針を立てやすくなります。
また、キャリアマップを策定して従業員の成長を定期的に見直せば、CoEメンバーとして活躍できるタイミングを見逃さすことなくメンバーに引き入れることができるようになるでしょう。
人材の育成・教育方針を策定する
CoEメンバーに適した人材がいない場合は、人材の育成・教育方針の策定が求められます。
策定したキャリア・スキルマップから、スキル習得のための計画を立て、進めていくとよいでしょう。
スキル習得計画は、中長期的に立てることと、必要なスキルを見極めたうえで立てることが重要です。
短期で進める計画や、習得するスキルの幅が広すぎる計画だと、人材に負担がかかったり、いつまでもCoEメンバーになれなかったりして、心身の疲弊や事業発展の遅れを招きかねません。
そのため、必要なスキルを取捨選択し、長い目で人材を育成しましょう。
社内全体での協力体制を構築する
CoEの導入を成功させるためには、CoEの役割や目的を従業員に認識・理解してもらい、協力体制を構築することが大切です。
たとえば経営層など組織のトップがCoE導入の必要性を積極的に説いたり、CoE自体が各部署の目標を設定したりして、全社的な協力体制をつくることが効果的です。
また、部署間の連携が強化されるようにコミュニケーションの場を設ける、現場社員へチェックリストを配布して、現状把握と課題発見につとめるなど、各部署とCoEが距離の近い対応をすることも、理解を促進するうえで効果的です。
従業員がCoEの役割や目的を認識することで、CoEの効果が発揮しやすくなるでしょう。
CoEの円滑な運用に「Chatwork」
CoEを導入すると、情報やノウハウがひとつの拠点に集約されるため、全社的にスムーズな情報共有ができたり、業務効率化につながったりするメリットがあります。
CoEの円滑な運用には、各部署との密なコミュニケーションが重要なため、ビジネスチャット「Chatwork」活用がおすすめです。
「Chatwork」は、チャット形式でやりとりができるビジネス専用のコミュニケーションツールで、1対1はもちろん、グループチャットを活用することで、複数人での円滑なコミュニケーションも実現できます。
たとえば、CoEが情報共有をするためのグループチャットを作成すると、社内の知見やノウハウを簡単に共有できるようになります。
また、ファイル管理機能も搭載されているため、テキストだけでなく、PDFなどの資料や画像、動画などで情報共有を実施することも可能です。
CoEの運用にも便利な「Chatwork」は無料で使い始めることができます。
ぜひ実際に使ってみて、情報共有や業務の効率化を実感してみてください。
Chatwork(チャットワーク)は多くの企業に導入いただいているビジネスチャットです。あらゆる業種・職種で働く方のコミュニケーション円滑化・業務の効率化をご支援しています。
[注1]出典:資生堂「センター・オブ・エクセレンス」ネットワーク体制を完成
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002042
[注2]出典:伊藤忠テクノソリューションズ「OutSystemsを採用したマツダ株式会社様の事例」
https://www.ctc-g.co.jp/report/case-study/mazda/
[注3]出典:NTTデータグループ「デジタル技術のグローバル集約拠点(Center of Excellence)を新たに3つ設立」
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2020/061100/
※本記事は、2025年1月時点の情報をもとに作成しています。