自律分散型組織(DAO)とは?メリットや導入方法を事例付きで解説
目次
近年、働き方や価値観の多様化から、組織のあり方にも変化が生じています。
自律分散型組織(DAO)も、ここ数年で注目されるようになった組織のあり方です。
自律分散型組織(DAO)とは、役職者やリーダーの指示を待つのではなく、従業員が自律して行動する組織のことを指します。
一人ひとりの考えを尊重できるので、従業員のエンゲージメントが高まりやすいと言われています。
この記事では、自律分散型組織(DAO)とは何か、導入するメリット・デメリット、自律分散型組織の作り方や成功させるためのポイントについて解説します。
自律分散型組織(DAO)とは
自律分散型組織とは、リーダーがおらず、役職による上下関係などもなく、メンバーそれぞれが自分の判断や意思によって自律的に行動できる組織のことです。
「Decentralized Autonomous Organization(直訳:非集中的な自立型の組織)」の頭文字をとって、DAOと呼ぶこともあります。
一般的に、企業であれば社長や経営陣、管理職など役職者からの指示によって動くピラミッド型なのに対し、自律分散型組織は役職者がいないフラットな組織である点が特徴です。
自律分散型組織が求められるようになった背景
自律分散型組織が求められるようになったのは、VUCA(ブーカ)すなわち予測不可能で変化の速い時代になったためです。
VUCAの時代においては、従来のピラミッド型組織で管理者からの指示を待つのではなく、各自が自分で判断し行動することで、状況に柔軟かつ素早い対応が可能です。
将来の不確実性が高く、変化の激しい時代に対応するために、自律分散型組織が求められるようになりました。
自律分散型組織の種類
自律分散型組織は、特徴ごとにいくつかの種類に分けられます。
代表的な組織として、以下の3種類があります。
- ティール組織
- アジャイル型組織
- ホラクラシー組織
自立分散組織の代表的な3つの形について、それぞれ詳しく解説します。
ティール組織
ティール組織とは、メンバー同士の上下関係がなく、それぞれが目的達成のために自分で考えて動く組織のことです。
ティール組織は、フレデリック・ラルーによって提唱された組織モデルのひとつで、組織は5段階に変化するとし、ティール組織はその最終形にあたります。
従業員それぞれがマネジメントを必要とせず、自らの意思や判断で行動し、結果を出すには、個人の自主性や組織目標の理解が必要です。
ハードルは高いかもしれませんが、そのぶん組織全体のパフォーマンスや従業員エンゲージメントの向上が見込めるでしょう。
アジャイル型組織
アジャイル型組織は、小規模の開発と検証を繰り返し、素早くPDCAを回して結果を出していく組織です。
アジャイルには、「素早い」「機敏な」といった意味があり、もともとはシステム開発における手法の名称です。
スピーディーに開発・実行し、高い機動力の発揮が目的のため、それぞれの従業員に一定の裁量を持たせ、チーム内で上下関係をつくらないという特徴があります。
効率を重要視した組織構成のため、スペシャリストの集団になる場合が多いです。
ホラクラシー組織
ホラクラシー組織とは、組織内の上下関係がなくフラットな状態の組織のことです。
フラットな組織である点はティール組織と同じですが、ホラクラシー組織には守るべきルールが存在している点が異なります。
メンバーはルールに基づいて各自で意思決定をおこなうため、ホラクラシー組織は組織の統制をとりながらも自由度の高い組織なのが特徴です。
自律分散型組織を導入するメリット
自律分散型組織の導入には、以下のようなメリットがあります。
- 変化対応力が高い組織になる
- 業務効率化がはかれる
- エンゲージメント向上がはかれる
組織に導入する際には、メンバーにメリットを伝えて理解を得るようにするとスムーズでしょう。
変化対応力が高い組織になる
自律分散型組織では、管理者からの指示を待つことなく各自の判断で行動するため、変化に対する対応力が求められます。
一人ひとりの判断力や行動力が求められるので、自然と変化対応力が高い組織になるでしょう。
また、上司に従わなければいけないといったプレッシャーもないため、心理的なストレスを抱えず、安心して自分の能力を存分に発揮しやすい環境になります。
その結果、自律分散型組織は、変化に対して柔軟かつスピーディーに対応ができます。
業務効率化がはかれる
従来の組織では、管理者の決めた方針がピラミッドの上から下へと伝達され、各役職者が指示を出してメンバーを管理するのが一般的です。
そのため、方針を決定してから実行するまでに時間がかかっていました。
しかし、自律分散型組織では、各自が自分で判断・実行できるため、効率的に業務をおこなえます。
エンゲージメント向上がはかれる
エンゲージメントとは、深いつながりをもった関係性のことです。
組織に対するエンゲージメントが高まると、メンバーは積極的に組織のために行動し、働きやすさも向上するといわれています。
自律分散型組織では、各自に権限が与えられ、自分が組織に貢献している実感がもちやすく、エンゲージメント向上につながります。
自律分散型組織を導入するデメリット
変化の早い時代に即した自律分散型組織ですが、導入する際には以下のようなデメリットを理解しておく必要があります。
- 高いセルフマネジメントスキルが求められる
- 情報共有が滞る可能性がある
- 意思決定に時間がかかる場合がある
自律分散型組織を導入するデメリットについて解説します。
高いセルフマネジメントスキルが求められる
自律分散型組織は、上司や管理職が存在しないため、高いセルフマネジメントスキルが求められます。
組織内のセルフマネジメントスキルが低いと、全体の業務効率が低下する可能性があります。
また、意思決定において上司からの承認がないため、ミスに気付きにくくリスク管理が難しい点もデメリットといえるでしょう。
情報共有が滞る可能性がある
自律分散型組織では、各自で行動しているため、ほかのメンバーがなにをしているのか把握しづらいというデメリットがあります。
何かトラブルが起きたときも、ほかのメンバーが気づきにくく、大きな問題に発展するリスクも考えられます。
導入する際には、定期的な情報共有の場を設けるなど、エラーやリスクをチェックする体制作りが必要でしょう。
意思決定に時間がかかる場合がある
自律分散型組織では、個人の意思決定は素早くおこなえますが、組織全体としての意思決定には時間がかかる場合があります。
従来のピラミッド型の組織では、組織のリーダーの意思決定によって決議がおりますが、自律分散型組織では、組織全体で投票をおこなう必要があり、かえって意思決定に時間がかかる場合があります。
自律分散型組織を作る方法
自律分散型組織を作るには、従来の上下関係との違いや実際の業務内容に沿った体制を構築する必要があります。
どのようにして自律分散型組織を作るのか、その方法について解説します。
働きやすい職場環境の整備
自律分散型組織を作るにあたっては、働きやすい職場環境の整備が必要です。
働きやすい職場なら、メンバーがモチベーションを維持しやすく、セルフマネジメントもおこないやすいためです。
自律分散型組織を作るには、まず多様な働き方を導入するなど環境整備が必要といえます。
目標や成果指標の明確化
自律分散型組織では、目標や成果の指標を明確にすることが大切です。
ピラミッド型の組織であれば、経営陣や上司の設定した目標をこなしていくシステムでしたが、自律分散型組織では各メンバーが自分で設定しなければなりません。
目標や成果指標の明確化のためには、たとえばミーティングなどを実施して、各自の目標や成果の状況を確認する時間を設けるとよいでしょう。
自律分散型組織を成功させるポイント
自律分散型組織を成功させるには、組織や業務内容に合わせた仕組みが重要です。
組織構築の成功には、以下のようなポイントをおさえておきましょう。
- 積極的に情報共有ができる仕組みを作る
- ミッションやビジョンの浸透をはかる
- 部分的な導入を検討する
- 最低限のルールは整備する
積極的に情報共有ができる仕組みを作る
自律分散型組織を成功させるには、積極的に情報共有できる仕組み作りが必要です。
情報共有が滞るリスクを防ぎ、各個人が自律しながらも組織として効率的に成果をあげるためです。
具体的には、社内SNSやチャットツールの導入、定期的なミーティングの実施などの方法が挙げられます。
ミッションやビジョンの浸透をはかる
一般的な企業でも、組織全体としてのミッションやビジョンを掲げています。
自律分散型組織も同様に、ミッションやビジョンを掲げることが大切です。
目指すべきミッションやビジョンが明確になっていると、各自の意思決定の基準が定まります。
メンバーにミッションやビジョンを浸透させることは、組織が成功を収めるために重要な要素といえるでしょう。
>MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に関する記事はこちら
部分的な導入を検討する
自律分散型組織は、これまでの組織のあり方とは大きく異なるものです。
急な変化を起こすことは難しく、かえって混乱が発生する可能性もあります。
組織全体を自律分散型組織にするのではなく、まずは部分的な導入を検討してみましょう。
最低限のルールは整備する
自律分散型組織は、個人が自由に行動できる反面、自由過ぎてしまい業務に支障をきたす可能性もあります。
組織としてうまく機能するために、業務フローのガイドライン化や一定の報告ルールなど最低限のルールは整備しましょう。
自律分散型組織の導入事例
自律分散型組織を導入した企業の事例を見ていきましょう。
どのように運用しているのか、どんな成果が出ているのかイメージがわきやすくなります。
貢献度による報酬制度を取り入れた事例
メンバーが、組織にどれくらい貢献したかによって報酬を支払う仕組みを取り入れた自律分散型組織の事例があります。
特定のコミュニティへの貢献度によって報酬として支払われるものを、ソーシャルトークンといいます。
従来組織のように、役職や階級などによって報酬を支払うのではなく、ソーシャルトークンが使われることで、メンバーの自律性も高められています。
既存の組織体制に組み込んだ事例
自律分散型とこれまでの中央集権的なシステム両方の特徴を取り入れた組織づくりをしている事例もあります。
中央集権的な組織構造のなかで、リーダーの活躍による成果も期待しつつ、自律分散型でより柔軟で効率的な組織運営をおこない成果をあげられる点がメリットです。
情報共有の活性化に「Chatwork」を活用しよう
自律分散型組織(DAO)とは、メンバーそれぞれが自分の判断や意思によって自律的に行動できる組織のことです。
不確実性が高く、変化の激しい時代に対応するために、自律分散型組織のあり方は注目されています。
自律分散型組織は従業員一人ひとりの裁量に任せる業務が多くなるため、情報の共有漏れが発生するというリスクもあります。
チャットツールなどの活用によって、自律分散型組織においても情報共有しやすい環境作りが大切です。
ビジネスチャット「Chatwork」を活用すると、グループチャットの作成で気軽に情報共有が可能になります。
また、テキストのほか音声通話やビデオ通話も利用可能のため、業務内容やチームに合わせたスタイルを選択できます。
>Chatworkの通話機能(ビデオ/音声通話機能)に関する記事はこちら
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